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屋内位置測位技術の利点と欠点:正しい選択をするためのポイント

位置測位システムは、Real Time Location System(RTLS)と呼ばれることもあり、多くの企業で利用され、安全性の向上、プロセスの最適化、効率の向上などのメリットがあります。
屋内位置測位システムは、アメリカの GPS やヨーロッパの Galileo のような GNSS(Global Navigation Satellite System)が使用できない閉鎖的なエリアで、人やモノの位置を特定したい時に活躍します。 しかしながら、全ての利用可能なテクノロジーを扱うことは、混乱を招く恐れがあります。
この記事では、一般的な屋内位置測位技術について、その長所と短所を紹介します。

屋内位置測位の仕組み

屋内の位置測位技術は、大まかに2つに分かれます。ひとつは、ビーコンやその他の外部デバイスを使う方法。もうひとつは、慣性追跡のようにセンサーを使う方法です。 外部デバイスを使う方法には、三辺測量と三角測量の2つがあり、センサーを使う方法には、慣性航法があります。

三辺測量

三辺測量では、ターゲットの近くにある少なくとも 3 つのビーコンの距離を使用して追跡します。この距離は通常、飛行時間 (ToF)、双方向測距 (TWR)、または到着時間差 (TDoA) によって推測されます。

飛行時間 (ToF): 送信者から受信者に信号を送信し、信号が 2 点間を移動するのにかかる時間を測定することによって距離を測定する方法。 LiDAR や超音波センサーも ToF を使用しています。

双方向測距 (TWR): 信号がビーコンとターゲットの間を行き来する時間を測定します。 TWR は精度が高いことで知られていますが、時刻の同期が必要なため、セットアップがより複雑です。

到着時間差 (TDoA): 複数の受信機 (衛星など) での信号の到着時間の差を測定します。GPS およびその他の GNSS は TDoA を使用します。

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三角測量

複数のアンテナを搭載したビーコンの中には、受信信号の角度を推定できるものがあります。標準的な方法には、到来角度 (AoA) と出発角度 (AoD) の 2 つがあります。

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一般的に広く使われているのはビーコンですが、長所と短所があります。 精度は優れていますが、導入が複雑になります。複数の建物で人やモノの位置を追跡するのに 1000 個以上のビーコンを設置することは珍しいことではありません。そんなビーコンに代わる方法として、慣性航法があります。

 

慣性航法

慣性航法とは、自己完結型の航法技術であり、加速度計とジャイロスコープによる測定値を使用して、既知の開始点、方向、および速度に対する対象物の位置と方向を追跡する方法です。
この方法は、自己完結型であるため、ビーコンを必要としないのが大きなポイントです。しかし、慣性航法を使ったシステムの多くは、コストが高かったり、精度が低かったりするのが課題となっています。

 

どのような技術があるの?

屋内位置測位システムで最も知られている技術を 4 つの側面から検証していきます:

  • 導入コスト:そのソリューションを採用する場合、どれくらいのコストがかかるのか?
  • 精度:一般的にどの程度の精度が期待できるか?
  • 柔軟性:PoC(Proof Of Concept:概念実証)を行いたい場合、開始するのは難しいか?また、冶金や製鉄工場、船など、屋内環境がより複雑な場合はどうすればいいのでしょうか?
  • リアルタイムの人の位置測位(または追跡)には適しているか?

さっそく始めてみましょう。

GNSS(Global Navigation Satellite System)

アメリカの GPS や中国の BeiDou のような GNSS(Global Navigation Satellite System)は、屋外の位置測位に広く使われています。しかし、屋内で使用すると、その性能は著しく変化し、通常は屋内位置情報システムとして推奨されません。状況に応じて、GNSS を検討することができますが、ほとんどの場合、RTLS はより正確で信頼性の高い技術が求められます。

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BLE (Bluetooth & Bluetooth Low Energy)

Bluetooth は、デバイス間の通信に電波を使用します。BLEは、低消費電力で電池寿命が長いため、屋内位置情報システムで広く使用されている Bluetooth の一種です。さらに、BLE 対応の屋内位置測位システムは、リアルタイムの追跡、ジオフェンシング、(地図上にバーチャルなフェンスを設置し、その中に特定の人や物が出入りした時にシステムからメッセージを送るなど、あらかじめ決めた処理を自動的に行うシステム)や近接アラートを行うことができます。

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BLE はビーコンを必要とするため、設置にコストと時間がかかり、発電所や建設現場などの複雑な環境には不向きです。また、屋内と屋外をまたぐ場所を追跡する必要がある場合、セットアップがより複雑になることもあります。 さらに、Bluetooth は金属製の構造物やコンクリートの影響を受けます。また、通信距離も限られています。天井が高いと、ビーコンを配備できないこともあります。電源については、BLE ビーコンはバッテリーで数カ月間動作させることができます。しかし、それ以外では、精度 1.5m 未満で良好な受信範囲を確保できるなど、コストと精度のバランスに優れています。

 

Wifi

Wifi は今やどこにでもあり、使いたいときに場所を選ばずに利用できるようになっています。そのため、この技術を活用した屋内位置測位システムは、BLE よりも導入障壁は低いですが、精度が低いという問題があります。

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すでに既存の WiFi インフラがあり、~ 5m の精度が許容できるとしたら、WiFi は素晴らしい選択肢となるでしょう。Bluetooth よりも範囲が広いので、より柔軟な対応が可能です。しかし、金属構造物やコンクリートの影響を受けることもあります。また、ビーコンは外部電源に接続する必要があることを留意しなければいけません。 それ以外の場合は、ここに挙げている他の技術を検討した方が良いかもしれません。

 

UWB(Ultra Wide Band)

UWB は比較的新しい技術です。この無線技術は、3.1 ~ 10.6GHz の周波数帯で動作します。非常に短いパルスの電波と ToF を使用して、モノの位置を特定します。非常に高い精度を提供することができますが、これまで紹介した技術よりも高価です。

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UWB もビーコンを必要とし、Bluetoothと WiFi の中間的な距離感を持っています。また、金属製の構造物など、環境の影響を受けます。それでも、適切な受信範囲を確保すれば、1m 以下の精度で屋内位置測位ができます。ビーコンは通常、バッテリーで 10 カ月以上動作させることができます。コストよりも精度を優先し、屋内環境が適しているのであれば、UWB は最適な技術です。

 

NFC (Near Field Communication)

意外なことに、近距離無線通信(NFC)は非リアルタイムの屋内位置情報システムに使用することができます。NFC タグに触れるだけで、建物内のモノや人の位置を特定することができるのです。NFC は、シンプルかつ堅牢な非リアルタイムの位置情報システムに使用することができます。

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PDR(Pedestrian Dead Reckoning)

PDR は、加速度センサーとジャイロスコープを活用して、対象物の位置を追跡します。この技術は、ボート、潜水艦、飛行機などで一般的に使用されています。しかし、センサー(特に MEMS)やウェアラブルデバイスが安価で高精度になってきたため、PDR はビーコンベースの屋内位置情報システムの代替手段となっています。

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高い精度が要求される場合、PDR では高価なウェアラブル端末が必要になります。ビーコンを使う余裕があれば、BLE や UWB がより良い選択肢となります。

 

次世代 RTLS

zeteoh TRAILS は、PDR と AI(人工知能)を組み合わせた柔軟なソリューションを提供します。これにより、数週間かかる屋内位置測位システムの導入を数時間で実現できます。また、TRAILS は屋内と屋外をまたぐ現場でも位置測位が可能です。

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まとめ

屋内位置測位に適した技術を選択するのは大変な作業です。それぞれの技術の利点と欠点を正しく理解し、現場の環境や条件、必要な位置情報の精度に合わせて、適切な技術を選択することが必要です。
一般的に、ビーコンを使ったソリューションは通常、精度は高いですが、柔軟性に欠け、莫大な導入コストがかかります。屋内位置測位技術を適切に活用することで、ビジネスに多くのメリットをもたらすことができます。

 

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